私が言っているのは体もだが、心の休息も大切だと言うことなのだが、レオは気にするなと言うばかり。

「レオ!おーーい。レーーオぉぉぉーー!」

 集中しているレオにもう一度声を掛けるが反応は無い。

 全くもう!

 私はぷくっと頬を膨らませながら、レオの頬に掛かるオレンジの髪をそっと耳に掛けて、頬にキスをした。

 集中していたレオの体がピクリと跳ねる。

「エン、何をする。こっちは真剣に……」

 エンはレオの言葉を遮った。

「だって最近レオってば、仕事仕事で寂しいんだもん」

 プイッと顔を逸らすと、レオがワナワナと震えだした。

「だもん……って、可愛すぎだろう」

 レオからボソリと呟く声が聞こえてくる。

 ふふふっ……どうやら効いているようね。

 名付けて、小説のヒロインツンデレ作戦でレオを翻弄して休ませよう作戦!

 レオが休みを取らないことを心配していると、ティエナが良い作戦があると言い出した。それがこれである。仕事ばかりで寂しいと言えば良いと、更には「仕事と私どっちが大切なの?」も入れた方が良いと言われたが、それはさすがに重いと却下した。ティエナは最後まで仕事ばかりで寂しいぐらいでは弱いと言っていたがレオには効いたようだ。

 これで少し休みを取ってくれれば良いのだけど。

「エン、今から休みを取ろう。二人っきりで過ごそう」

「えっ?今からですか?私は仕事の途中ですよ。レオには休んで欲しいけど、私の仕事は残っていますし、きちんと終わりにしてからで無いと、さすがに皆に迷惑が掛かってしまいます。レオもきちんと仕事を終わりにして、明日お休みをしっかり取ろう」

「大丈夫だ。エンの頼みなんだ。誰も文句は言わせん。今から……」

 ええっ……私のワガママのせいで、皆に迷惑が掛かるのは困る。

 エンはレオの頭を優しく撫でながら諭していく。

「レオには休んでもらいたいけど、仕事はきちんと終わりにしないとダメだよ。それが出来るのが大人ってもんだよ」

「ぐっ……しかし、エンが寂しがるのは……」

「寂しいよ。でも、今の私にはこれで十分」

 私はそう言って、レオの胸に飛び込み、ギュッと抱きしめた。

「レオの力をいっぱいもらうね。レオチャージ」

 顔を上げてニコリとレオに微笑みかけると、レオの顔が見る見るうちに赤くなっていく。

「何……何それ……エンっ、かわい……ムリ……」

 ボソボソと心の声を漏らしながら、レオが唇を震わせている。

 わーっ、レオってこんな顔もするんだ。

 たじろぐレオが可愛すぎる。

 私は両手でレオの頬を掴むと、レオの唇に自分の唇を押し当てた。

「レオ可愛い。大好き!」

 レオは怒っているときとは違う咆哮を上げると、休みを取るため猛烈な勢いで仕事を開始した。それから仕事をきちんと終わりにしたレオは、次の日にゆっくりと休みを取った。

 あの日、渋々仕事に戻ったレオは、残っていた仕事を全て終わりにするため、物凄い勢いで仕事を終わりにしたらしい。レオの側近達はレオの勢いに押され、それはそれは大変な一日だったとゲッソリしていたらしい。

 数日後それをティエナ経由で聞いたエンは、申し訳ない気持ちでいっぱいになったのだった。