「そう……よかった。エンちゃんはいい人に出会えたのね」

「はい。とても優しくて、可愛くて、格好いい、素敵な人なんです」

「そうなのね。レオンポルド様、エンちゃんをよろしくお願いします。二人ともお幸せにね」

「「はい!」」

 レオが私の肩を抱き寄せてくれたため、視線を合わせてから二人同時に返事をした。




 あれからレーニン様は三日間眠り続けている。時々苦しそうに体をモゾモゾと動かすが、声を発することも、目を覚ますことも無かった。眠り続けるレーニン様の体をマッサージしながら、エンは涙を堪え、話しかけた。

「お母さん、今日はとても良い天気なんですよ。庭に綺麗な花が咲いていたので摘んできました。匂いだけでも楽しめますかね?」

 私は眠るレーニン様に話しかけた。すると眠りながらも時々口角を上げてくれる。私の話を聞いてくれている……そう思い、私はレーニン様に沢山話しかけた。

 それから更に二日後、デクスター先生が往診にやって来た。眠り続けるレーニン様の体を慎重に診ながら、フーッと深いため息を漏らした。

「エン様……もうそろそろだと思われます」

 私はその言葉に肩を振るわせた。

 ああ……とうとうその時が来たんだ。

 レーニン様に残された時間はもうわずか……。

「そう……ですか……分かりました」

 何が分かったと言うのだろう。自分で言った言葉だというのにイラッとした。

 私に何か出来ることはないのかと模索するが、何も思いつかない。看護師の資格があればもっと何か出来たのだろうか?医師の資格があったらもっと何か出来たのだろうか?そんな資格は無いから、どうにもならないというのに……そんな事ばかり考えてしまう。

 何も出来ない自分が歯がゆくて、唇を強く噛んだ。