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「んっ……?眩しい……」

 耳に届くのは鳥のさえずり、森林の葉擦れの音、土の匂い、最高の目覚め……。

 ではない……。

「はぁーー。夢では無かったか……」

 ぐっすりと眠った私は、そう独りごちてからゆっくりと伸びをした。

 我ながら図太いと思うよ。

 この状況で、ぐっすり眠れるんだから。体を固定しておいて本当に良かった。そのまま寝ていたら木から落ちていただろう。

 固く縛ったツタを何とかほどき、クルクルとまとめると肩に掛けた。今日も野宿ならこのツタがきっと役に立つ。ここに捨てていくのは勿体ない。

 さてと……私は何処に向かって行ったら良いのだろうか?全く分からない。確か……遭難したら生存率を上げるために登れ、と言うのを聞いたことがある。その理由は山頂で尾根に出たり、登山道に出られるからとかだったかな?頂上からなら小屋か、村が発見できるかも……留まっていては生存率は上げられない。

 うん、行動あるのみ!とにかく動きだそう。

 木から地面に立った私は、朝露で濡れた葉を見つめた。日本ではあまり見ない大きな葉の上に、水が溜まっている。

 これは……飲んでも大丈夫かしら?

 そっと手で触れても、葉が動く様子は無い。

 ゆっくりと葉を傾けて、朝露の水を口に含む。

「美味しい。水分が体に染み渡る。そうだ!これが使えるかな?」

 縁が取り出したのは未使用のゴム手袋だ。利用者さんのおむつ交換時や、爪切りなどをする時に使うそれに、朝露を集めていく。これで水分確保。

 さてと……出発しますか。