ああ……ダメだ。

 こんなことを考えていては、また悲しくなってしまう。笑うことが出来なくなってしまう。

 大丈夫、レーニン様はまだまだ大丈夫。

 元気でいてくれる。

 それからはレーニン様の前では勤めて笑顔でいた。

 悲しみをレーニン様に悟られてはいけない。

 気を抜くと涙があふれ出てしまうから、瞳に涙が溜まるのを必死で堪えて口角を上げる。

 しっかりしなさい。

 自分を叱りつけて両頬を両手で叩いた。


 レーニン様はベッドで眠っていることが多くなり、最近は部屋に行ってもいつも眠っている。エンはベッドの横にある椅子にそっと腰を下ろした。レーニン様の顔を見ると穏やかな顔をしていて、苦しそうな顔はしていない。

 良かった。

 私は安心してフーッと息を吐き出すと、窓の外を眺めた。外は太陽の光で溢れていて、木々や花が風で揺れている。

 良い天気だな。

 私はボーッと外の様子を眺めながら鼻歌を歌った。目を瞑り、日本にいるときに好きだったバラードを口ずさんでいると、何かが後ろから覆いかぶさってきた。

 このお日様の匂いは……。