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 転居してから、施設の運営は何とか上手くいっていた。この国初の施設運営と言うことで、国が十分な資金を出してくれているため、融通が利く。入居しているのが先王様ということが大きいのかもしれない。レオも積極的に施設のあり方、今後この国にとって無くてはならない施設となることを、言説してくれている。そのため、貴族からの援助の話しも後を絶たない。今まで悪魔付きを殺せ殺せと言っていた人達が、手のひらを返したように積極的に施設を援助してくれるのは正直心から喜べないが、援助してくれるのはありがたい話だ。今まで認知症の獣人さん達は悪魔付きとして処刑されてきた。その事実は変わらないが、こうして人々の意識が変わってきたことが嬉しい。

 そのおかげで、今日も利用者様達はとても楽しそうに過ごされている。元聖女のレーニン様も倒れたと報告をくけた日以来、調子を崩すこと無く生活していた。

 良かった。

 本日はヤギ獣人のデクスター先生が往診に来てくれる日のため、準備をして待っていた。

「デクスター先生お世話になります。よろしくお願いします」

「これはこれはご丁寧にありがとうございます」

 顎のひげを撫でながら、デクスター先生は優しい笑みを浮かべた。それから利用者様一人一人の診察を丁寧に診てくれた。利用者さん達はそれなりに安定しているが、私が今一番気になるのはレーニン様のことだ。

「先生、レーニン様は今、どのような状態ですか?」

 先生は眉をひそめると顎ひげを撫で、言葉を選びながら話し出した。

「エン様……レーニン様は数年前から病を患っておられたのですよ。(しん)(ぞう)の病で、もう限界なのです」

 限……界……?