「だが今は使われていない。先王の代から側室を目取る事は無かったし、現王も正妃以外に愛人はいないからな」

「そうなんですね」

 ホッと胸を撫で下ろすと、何故がレオが嬉しそうにすり寄ってきた。

「エンは以外と嫉妬深いんだな」

「そっ……それは、その、好きな人には私だけを見てもらいたいんですよ。レオは自分以外に好きな人がいるって言われたら、どう思いますか?」

「そいつの息の根を止めるな」

 喉を掻ききってやると、獰猛に喉を鳴らすレオの姿に冷や汗が出た。

 この人なら本当に殺す(やる)だろうな。

 愛の重さが度を超している。

 私の口から「おっもっっ……」と本音が漏れた。

「重いか?エンはこれからもっと俺からの愛を知ることになるんだぞ」

 それはどんなものなのかと聞こうとして、エンは止めた。

 きっと聞かない方が良い。

 危険な光を宿したレオの空色の瞳を見て、私はそう思ったのだった。



 離宮は王城の奥に立てられていた。

 元々王様の側室達が暮らしていた建物と言うこともあり、豪華な作りだった。

 離宮は随分長い間放置されていたのだろう。中は埃にまみれていて、掃除が大変そうだ。しかし綺麗に掃除すればすぐに使えそうだった。一階には大きなホールがあり、床はバリアフリーの様に段差も無い。