そんな私の前に、小さな生き物が飛び出して来た。私はそれを避け、走りながら振り返る。すると、小さな生き物の体はツタに絡め取られ、地面を引きずられながら引き込まれていく。私はその先を見ないようにしながらその場から逃げた。これはこの森の植物連鎖だと自分に言い聞かせ、心の中で先ほどの生き物に合掌した。

 そうして何とか手に入れたツタを使って、体が地面に落ちないよう木と体を固定するために巻き付けた。

「はぁーー。疲れたな……」

 ふと空を見上げると、月が二つ出ていることに気づいた。

「どうりで明るいと思った……」

 森の夜はもっと暗いと思っていたが、月が二つ出ていることで思ったよりも暗くなくて安心した。

 しかし、月が二つ出ているとは……。

 本当にここが日本……地球では無いことが確定してしまい肩を落とした。

 私はもう帰ることが出来ないだろう。失意のどん底に落とされ、暗闇に引きずり込まれるように睡魔に襲われた縁は、そっと目を閉じた。