(えん)ちゃん、今日は天気が良いから利用者さんを外で日向ぼっこさせてあげましょう」

「日向ぼっこですか?良いですね。すぐに利用者さんに声を掛けて準備を始めますね」

 私園田縁(そのだゆかり)26歳は笑顔で施設長に返事を返し、利用者さんの元へと向かった。利用者さんとは高齢者施設を利用されている人達のことで、縁は介護士として働いている。縁の働く施設は入居型介護施設と呼ばれる施設で、入居されている利用者さんが22名、自宅からデイサービスのみ利用されている方が8名いる。毎日楽しく働く縁だが、この仕事は3Kと呼ばれ、『キツい、汚い、危険』などと言われ敬遠される事が多い職種だ。それでも縁にとって、この仕事は天職だった。利用者さんの笑顔を見れば元気が出るし、毎日が充実している。最高の職場だ。

「皆さん、今日は外に日向ぼっこに行きますよ。天気は良いですが、少し肌寒いので一枚上衣を着て行きましょう」

 縁は一人一人に上衣を着せていく。すると利用者さんから笑顔でお礼を言われた。

「エンちゃんありがとうね」

「エンちゃんと外に行けるのかい?嬉しいね。アメちゃんいるかい?」

「エンちゃんは今日も元気だね」

 エンちゃんとは私のあだ名だ。園田縁(そのだゆかり)の園と縁の音読みがエンのため、利用者さん達からエンと呼ばれるようになった。

「さあ準備も出来たし、外に行きましょう。その前に施設長に声を掛けてきますね」

 私は一緒に働いているスタッフに声を掛け、施設長のいる部屋へと向かって歩いていた。

 そして、それは突然だった。