「……あれ?杏子じゃん、こんなところでなにしてるの?」
「美加ちゃん!」
一階の校舎を歩いていると、うしろから声をかけてきたのは美加ちゃんだった。
髪をギュッと一つに結んで、お揃いの三角巾とエプロンを身に着けている美加ちゃんは、今日もすごくかわいい。
美加ちゃんは、私がこの学園に入学してはじめて喋ったお友達。
席がとなり同士だった美加ちゃんが、私に『入学式、緊張するね』と声をかけてくれたことがキッカケだった。
今はそこに鈴菜ちゃんも加わって、いつも三人で毎日楽しく過ごしている。
学園生活がこんなにも楽しいと思えるのは、間違いなく二人のおかげだ。
「かわいいエプロンだね!今日は料理部の日だったんだ!」
将来は料理の先生になりたいと言っていた美加ちゃんは、この学園の料理部に所属している。
家でもよく一人でお菓子を作っているようで、私と鈴菜ちゃんにこっそりと『家で食べてね』とお裾分けしてくれるんだ!
「そうだよ、今やっと作り終えたところなの。……で、杏子は?杏子だって部活でしょ?」
「そ、それが……」
部活の話を振られた途端、私の元からスッと笑顔が消え去った。
頭の中に浮かび上がった文字は、『マンガ研究部』と『廃部』の二つ。
「……実はね?」