同じ生徒会のメンバーである来栖先輩なら、なにか知っているかもしれないと思っていた。
だけど、先輩はその一言だけ置いて去って行ってしまった。
来栖先輩が移動しはじめると、再び沸き起こる生徒たちの歓喜の声。
そして次第に、その声は声色を変えて私に向けられる。
「ねぇ、杏子!生徒会に勧誘されてたの!?」
「なんで!?」
「どうして宮田さんが生徒会に!?」
「ズルいんだけど!!」
「どうやって声をかけてもらったのか、私たちにも教えてくれない!?」
「ちょっ、ちょっと待って!」
私の周りには、みるみるうちに人集りができてしまっている。
あちらこちらから質問が飛んできて、目が回ってしまいそう。
「ちょっとみんな、杏子が潰れちゃうでしょ!」
「そうだよ!もうすぐ休憩時間も終わるし、自分の教室に戻りなよ!」
困り果てていたとき、間から割って入るように助けてくれたのは美加ちゃんと鈴菜ちゃんだった。
二人にも言えていなかったことに対する罪悪感と、それでもこうして手を差し伸べてくれる感謝の気持ちが入り交じる。
あぁ、こんなふうになるのが嫌だから誰にも知られたくなかったのに。
「(もしかして、袴田先輩はこうなることも分かっていたんじゃ……?)」
そう考えると、なんだか胸の中がムカムカしてきた。
手の中にある袴田先輩からの通知書を、クシャリと握った。
そのときちょうど、お昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。
一年二組の教室の中に集まっていた女子たちは、『杏子、またちゃんと話を聞かせてもらうんだからね!』と言いながら自分の教室へ戻っていく。