「杏子も見事にその資格を得たってこと、おめでとう」
「(全然嬉しくないんですけど!)」
「だからね、キミに拒否権なんてないってわけ」
「そ、それでもお断りさせていただきます!」
冗談じゃない!そんなのってあんまりだ!
私は袴田先輩の前に立ちはだかって、大きな声でそう言った。
私には、少女マンガ家になりたいっていう大きな夢がある。
そのために、毎日勉強で忙しい合間を縫ってマンガを描き続けている。
少し前に、約二ヶ月もかけて書き上げた、短編の読み切りマンガ。
いつも愛読している漫画雑誌の出版社が出しているコンテストに、やっとの思いで応募してみたんだ。
一生懸命描いた原稿を郵送するとき、すごく怖かった。
ドキドキもしたし、不安にもなった。
そのコンテストに受賞すれば、来月号に掲載してもらえるという特典がついている。
これまでずっと読者側だった私が、はじめて作者として名前が載るかもしれないのだと思うと、胸がワクワクした。
だけど、私が描いたマンガは『佳作』だった。
金賞と銀賞以外は、雑誌に載ることができない。
「(はじめての挑戦で受賞できるわけないって思ってたけど……っ、やっぱり悔しかった)」
『佳作』は編集部からの講評というものがついてくる。
そこにはこう書かれてあった。
『絵はとてもよく描けています!』
『でも、惜しかったのは少女マンガならではのドキドキのネタが少し物足りなかったこと』
『もっともっと、読者さんがドキドキして、胸キュンするような“恋のネタ”を普段から探してみて?』
『そうすれば、今よりもステキなマンガが描けると思います!』