「これは別に、杏子に“お願い”してるわけじゃないんだよ」
「え?」
「杏子がさっきの場面を見た瞬間から、キミに拒否権なんてものはない」
「ど、どういうことですか?」
「杏子が生徒会に入ることは、生徒会長である俺の“命令”ってこと」
「なにそれ……!」
「生徒会長の命令は、絶対だ。つまりどんなに嫌がっても、杏子が生徒会のメンバーになることはもう決定事項なんだよね」
そんなの横暴だ!職権濫用だ!
人の意見も聞かないで、命令だとか、拒否権はないだとか、さっきから聞いていれば強引すぎるよ!
「ねぇ、生徒会のメンバーに選ばれる基準ってなんだと思う?」
袴田先輩の突然の問いかけに、私は警戒しながらもうーんと頭を悩ませた。
生徒会のメンバーに選ばれるなんて、きっと相当優秀な生徒に違いない。
「えっと、すごく頭がよくて、成績も常に一位で、あとは運動もできて、それから……」
「ふっ。全部ハズレ」
「違うんですか!?」
生徒会長である袴田先輩が、自ら推薦してメンバーを選ぶ制度。
先輩はいったい、どんな基準で選んでいるんだろう。
誰も知らない、生徒会に秘密に少しだけ心が躍る。
明日こっそりと美加ちゃんと鈴菜ちゃんに教えてあげようと思った。
「──簡単だよ。なんらかの理由で、俺のウラの顔を知った人を選んでるだけだから」
「…………え?」
「まぁ、別に俺の本性が他の生徒や先生にバレたって関係ないんだけど、いろいろと面倒でしょ?」
「……」
「うっかり見られたヤツを生徒会に入れて、監視下に置いてるって感じかな。基準はそれだけ」
衝撃の事実に、空いた口が塞がらない。
学園中の生徒が知りたがっていた、生徒会に入るための基準が、そんな最低なものだったなんて!
こんなの、美加ちゃんたちに教えてあげられないよ!