言ってやった。言ってやったぞ宮田杏子!
ずっと考えていた。
これは私と袴田先輩の、交換条件だ。
私は袴田先輩の裏の顔のことを秘密にする。
その代わり、袴田先輩はマンガ研究部を潰さない。
「(我ながら、完璧な交換条件だ!)」
あとは、先輩がどう出てくるか……。
「──ふっ!あっははは!」
「せ、先輩……?」
私が条件を出すと、袴田先輩は大きな目をさらに広げて一瞬だけ間を開けたあと、大きな声をあげて笑いはじめた。
いったいどうしてしまったんだろう。
「キミ、今俺に交換条件の提案をしてんの?」
「だって、これならお互いに悪くない条件だと思います!」
「予想以上におもしろいね、杏子」
「わ、私は本気で言ってるんです!」
マンガ研究部を潰されたくない。
あそこは私の大事な居場所だから。
家で絵を描いていると、お母さんは『勉強もしなさいよ』っていつも言ってくる。
だからマンガ研究部だけが、なにも考えずにマンガに没頭できる唯一の居場所なんだ。
「お願いします!私、部員集めだって頑張ります!」
「……」
「一生懸命、頑張るから……っ。だから、廃部にしないで」
袴田先輩と距離をとって、深く頭を下げてお願いした。
美加ちゃんがアイデアを出してくれた、部員集めのポスターだって描くよ。
部活に入っていない子や辞めちゃった子に、片っ端から声をかけて入部してもらえるよう努力だってする。
だから、どうか──。
私から、大切な居場所を奪わないで。