私よりもうんと背の高い袴田先輩は、冷たい視線で私を見おろす。
その視線が怖くて、私は目を合わせることができないまま、ただジッと下を向いていた。
「廃部?……あぁ、キミ、マンガ研究部の子?」
「そ、そうです」
「一年生だよね?名前は?」
「宮田、杏子……です」
「杏子ちゃん、ねぇ」
名前を覚えられてしまった。
もしも袴田先輩のウラを顔を見てしまったせいで、停学になっちゃったらどうしよう。
これから自分がどうなってしまうのか怖くて、そっと先輩のほうを見上げる。
「……!」
その瞬間、私の心臓がドキッと高鳴った。
高い身長に、よく似合っている制服。すべてが完璧に整っている顔。
艶のある黒髪が風に吹かれて、前髪が少しだけ目にかかっている先輩は、近くで見れば見るほどイケメンだ。
学園中の女子生徒が一度は袴田先輩のことを好きになる、だなんて言われているけれど、それは嘘じゃないかもしれない。
その容姿は、まるで私の大好きなマンガ『キミと恋するまで、あと少し。』のヒーローにそっくり。
こんな状況だっていうのに、ドキドキが止まらないよ……!
「さて、と。さっきの場面を見ちゃったキミを、どうするか……だけど」
「……っ!」