「いい?次、はないからね」
「わ、分かった!もう二度としねぇから!」
「つ、つーかお前、生徒会長なんだろ?俺たちにこんなことしていいのかよ!」
「……こんなこと?これはただの“指導”だけど?」
「な、何が指導だよ!俺たちを吹っ飛ばしやがって」
「そ、そうだ!お前の本性、学園中に広めてやるからな!」
不良の先輩たちは、捨て台詞を吐きながら袴田先輩と少しずつ距離を取っている。
まるで悪魔でも見てしまったかのように怯えている不良の先輩たちを見て、私も余計に怖くなった。
「(み、みんながこの場からいなくなるまで隠れていよう)」
そう思いながら、どうにかバレませんようにと心の中で何度も祈った。
「本性を広める?お前たちが?いったい誰が信じてくれるんだろうね」
「くっ、この……っ」
「なんのためにこの体育館裏に呼び出したか考えなよ」
この体育館裏は滅多に生徒が通らない。
だから袴田先輩は、わざと不良の先輩たちをここへ呼び出したのだろうか。
「(ここなら誰にも……バレないから?)」
そうとは知らずに、なにも考えずに袴田先輩のあとをついてきてしまった自分を激しく後悔した。
何も言い返せなくなった不良の先輩たちは、最後に「クソ!」と吐き捨ててこの場を去っていく。
あとは袴田先輩が戻ってくれれば解決だ。
「(早く教室に戻って……っ!)
キュッと目を瞑って、隠れながらそう思っていた。
「──さて、と」
「……っ」
「そこの角に隠れてる子、そろそろ出てきたらどう?」
「!?」
だけど、そんな私の願いも虚しく、袴田先輩の声は私のほうに向けられた。
ザッ、ザッ、とこちらへ歩み寄ってくる足音が聞こえてくる。
「(ど、どうしよう……っ!)」
私、もしかして今、大ピンチかもしれない!