「じゃあ私、袴田先輩に会いに行って……」
「──ねぇ、杏子!あれ!」
私の言葉を遮って、美加ちゃんは突然大きな声を出した。
そして、スッと指を差したその先。
「あれ、袴田先輩じゃない!?」
「えぇ!?」
そこには確かに、ずっと探していた袴田先輩の姿があった。
「(体育館裏のほうに、向かってる?)」
「杏子、ラッキーじゃん!早く行っておいでよ!」
「う、うん!ありがとう、美加ちゃん!行ってくるね!」
「どうなったか、また明日話聞かせてね!」
「もちろん!」
私は美加ちゃんに手を振って、急いで袴田先輩のもとへ走った。
生徒思いの袴田先輩になら、マンガ研究部の廃部をどうにか取りやめてもらえるかもしれない。
少し前までのモヤモヤが、今では嘘のように消え去っていく。
「(これでまた、うんとマンガの練習ができるんだ!)」
そう思うと嬉しくて、ピョンと飛び跳ねながら先輩のあとを追っていた……そのとき。
──ドサッ。
「……ん?」
何かが倒れるような鈍い音が、私の耳に届いた。
それはちょうど、袴田先輩が向かっていたほうから聞こえた音だった。