この歳になってようやく
初めて自分のことより相手のことを
考えれるようになれたことが
すごく嬉しかった。


泣きそうになるのをグっと堪えて
お酒を一気に飲むと、頭がくらっとした時に、隣に座ってきた人に肩を抱き寄せられ
驚いた私は視線を左に向けてみた。


えっ!?


なんで‥‥ここに?





『こら、飲みすぎるなって言っただろ?』




さっき電話を切ったばかりの相手が
隣にいることが信じられなくて、
何にも言葉が出てこない。


スーツの上に着ていた
チェスターコートを脱ぐと、慎さんと
普通に話している彼をただただ眺めていた




「‥ハル‥‥なんで?‥出張は?
 まだ終わってないのに‥‥」


『また月曜日の朝一で行けばいい。
 週末はどのみち休みだし、
 今日は奈央といたいからさ。』


‥‥なにそれ。

そういうセリフはね、ハル。
好きな人に言うんだよ?


友達といたいからって、
新幹線と乗り継ぎで片道3時間かけて
帰ってきちゃダメだよ‥‥


今さっき諦めた気持ちを慎さんに
言ったばかりの私は、今のこの体制が
キツすぎて、片手でそっとハルの体を
押し返した。


「‥‥ビックリさせすぎだよ、ほんと。」



『帰ってきて嬉しかった?』


ドクン