本当は1秒でも早く帰りたかったけど、
走ってきた同じ方向だし、
断るのもなんとなく申し訳なくて、
自転車から降りた。
大倉さんは注意した方がいいって
言ってたけど、今だって嬉しそうに
笑うこの人が変な人には見えないんだけどな‥
『今日はバタバタでしたね。
納期に余裕で間に合わせてくれたので
さすがだなと思いました。』
「いえいえ、慣れですかね‥‥。
早く帰りたい一心なので。」
どうしよう‥‥
ただでさえ人との付き合い方が
下手くそなのに、上手く会話を繋げれない
ハルや慎さんと
いつもどんなふうに話してたっけ?
そもそも私なんかと帰って、
主任の方が気を使うんじゃないか心配になる。
『甲斐田さんのことは、東井の彼女って
彼に聞いていたので会うの楽しみに
してたんですよね、僕。』
えっ?
暗闇の中で見える笑顔が少しだけ
いつもと違って見えると、
大倉さんのことが頭をよぎった
ハルから聞いてた‥‥?