――エージ先輩に謝らなきゃ。

 そう思うのに、ここのところ天気はずっと雨。
 もしかしたら……と思い一度屋上に行ってみたものの、ザーザー雨が降りしきる中やっぱり先輩がいるはずもなく。
 先輩のクラスも知らないし、かといって三年生の教室をまわる勇気もない。 
 結局、もう一週間近く会えていなかった。

 なんであんなにひどいことを言ってしまったんだろう。
 『エージ先輩には関係ないじゃん』なんて。
 熱があったとはいえ、言っていいことじゃなかった。
 エージ先輩はわたしのことをただ心配してくれたのに……。後悔はつのるばかりだ。
 早く会って謝りたい。じゃないと、もうすぐ夏休みが始まってしまう。
 夏休みが始まったら……エージ先輩には会えなくなる。

「杉咲さん、手が止まってる」

「え……あ、ごめん」

 向かいの席に座る樋口さんがわたしをじとっと見た。
 わたしは慌てて、机の上に置いてある紙のタワーから一枚とって、そばにサッと引き寄せる。
 えっと……サッカー部は『ミニストラックアウト』ね……。
 各部活や有志で集まったグループが、文化祭でどんな催し物をするのか……それをパソコン上に入力していく作業を、わたしと樋口さんの二人で担っていた。

 きっとこれが紗枝や美優なら「なんでこんなことしなきゃいけないのかなー」「二年に任せるなって感じ」とぶつくさ文句を言いそうなものだ。
 「ね、芽衣もそう思うでしょ?」と聞かれてわたしが曖昧に頷くところまで想像できる。

 だけど目の前の樋口さんは、ただ黙々と作業に徹していた。
 効率重視で、わたしがよそ見をしようもんなら鋭い視線が飛んでくる。