「せ、先輩!」
「ほら、話してみたかったんでしょ?」
焦るわたしに、エージ先輩が耳元で優しく囁く。
たしかに彼女と話してみたかった。だけどこんな急に? 心の準備というものができていない。
「そ、そうですけど……!」
エージ先輩、どうしよう。そんな気持ちで隣を見たら、さっきまで話していたはずの先輩の姿がない。
忽然と、という言葉がぴったり当てはまるくらい、本当にとつぜんいなくなってしまった。
もしかして……帰っちゃった?
わたしがもたもたしているから呆れたんだろうか。
そうだ、せっかくの機会。ここで出会ったのは、きっとわたしが彼女と話す運命だってことなんだと思う。
ごくりと喉を鳴らして、じっと樋口さんを見た。
学校でのことがあってから話すのは初めて。ピリピリと緊張感が漂う。
すうっと息を吸って、
「あの――」
思い切って話しかけてみた。
「あの……ちょっと話さない?」
樋口さんのことだから、冷たく「興味ない」とかなんとか言って断られる。
そう思ったのに、彼女は学校にいるときよりいくらか柔らかい表情で「いいよ」と言った。
「わたし、この後用事あるから、ここで立ち話になるけど」
樋口さんは腕時計を確認して、それから再びわたしを見る。
「あっ、そうだよね。……ごめん」
「なんで謝るの」
「用事があるのに話しかけちゃったし……それに、この前のことも……本当にごめん」
ずっと言わなきゃと思っていた。文化祭実行委員で、わたしが期日を守れなかったこと。
塾のことで頭がいっぱいで、引き受けた実行委員をおろそかにしていたこと。
もう一度怒られる覚悟で言ったのに、樋口さんは「ああ、あれ」と、ケロッとしている。
「もういいよ。なんだ、そのことを話したかったの」
「ほら、話してみたかったんでしょ?」
焦るわたしに、エージ先輩が耳元で優しく囁く。
たしかに彼女と話してみたかった。だけどこんな急に? 心の準備というものができていない。
「そ、そうですけど……!」
エージ先輩、どうしよう。そんな気持ちで隣を見たら、さっきまで話していたはずの先輩の姿がない。
忽然と、という言葉がぴったり当てはまるくらい、本当にとつぜんいなくなってしまった。
もしかして……帰っちゃった?
わたしがもたもたしているから呆れたんだろうか。
そうだ、せっかくの機会。ここで出会ったのは、きっとわたしが彼女と話す運命だってことなんだと思う。
ごくりと喉を鳴らして、じっと樋口さんを見た。
学校でのことがあってから話すのは初めて。ピリピリと緊張感が漂う。
すうっと息を吸って、
「あの――」
思い切って話しかけてみた。
「あの……ちょっと話さない?」
樋口さんのことだから、冷たく「興味ない」とかなんとか言って断られる。
そう思ったのに、彼女は学校にいるときよりいくらか柔らかい表情で「いいよ」と言った。
「わたし、この後用事あるから、ここで立ち話になるけど」
樋口さんは腕時計を確認して、それから再びわたしを見る。
「あっ、そうだよね。……ごめん」
「なんで謝るの」
「用事があるのに話しかけちゃったし……それに、この前のことも……本当にごめん」
ずっと言わなきゃと思っていた。文化祭実行委員で、わたしが期日を守れなかったこと。
塾のことで頭がいっぱいで、引き受けた実行委員をおろそかにしていたこと。
もう一度怒られる覚悟で言ったのに、樋口さんは「ああ、あれ」と、ケロッとしている。
「もういいよ。なんだ、そのことを話したかったの」