「ここって……」

「芽衣が行きたいかなって思って」

 振り返ったエージ先輩がニコッと微笑む。
 この場所を選んだのは偶然? それとも……。エージ先輩はやっぱりどこか不思議だ。

「ゲーセンってオレ初めて」

「えっ」

 自動ドアをくぐる瞬間、となりから聞こえるエージ先輩の言葉に驚く。

「え……って。そんな意外?」

 わたしが全力で頷いてみせたら、先輩は「オレってそんなにチャラいかなー」と困ったように笑った。
 チャラい、というか、オレンジの髪で派手だし、友達がいっぱいいそうだから遊んでるのかなと思って。
 そう思ったけど心の中でとどめておくことにした。
 でも……そっか。初めて同士だと思ったらいくらか気が楽になる。

「ねー芽衣! アレ! アレやりたい!」

 子供みたいにはしゃぐ先輩が指さしたのは、最新のプリ機だった。
ナチュラル盛りが売りで、肌の質感からまつ毛の長さまで細かく変更できるらしい。
 
「ええっ……わ、わたし、撮ったことない……」

「だからオレもだって」

 まだやると言ってないのに、エージ先輩は素早く中に入っていった。

「ちょっと待ってくださいよ」

 カーテンの中を覗くと、
『どっちのコースをするか選んでね』
エージ先輩はもうすでにお金を入れてるみたいだった。
 そのまま躊躇いもなくどんどん画面を押していく。

「ほら芽衣、早く早く!」

「え、ちょ、ウソでしょ!?」

――3・2・1

「わ、わ、わ、待って待って待ってま――」

――パシャリ。

 画面に映し出されたのは、うろたえてワタワタしているわたしと、いつも通りの笑顔――つまり完璧なキメ顔のエージ先輩だった。

「待ってって言ったのに……!」

「あーほら、もう次の撮影だってさ」

「え!?」

―――3・2・1・パシャリ。