「なにそれ、聞いてないよ?」
「なんで急に?」
「それは」と言いかけた言葉は、紗枝の「あーわかった!」にいとも簡単にかき消されてしまう。
「塾でしょ。勉強に本腰入れるから部活やってる場合じゃないんだ」
「ええっ、まだ中二の五月なのに?」
「甘いよ美優。いくら余裕ったって、S高行くような人はこの時期から勉強するんだって」
「なるほどねぇ」
紗枝が得意げに語り、それに感心した美優が尊敬の眼差しをわたしに向けた。
「あ、やば! そろそろバスの時間きちゃうよ」
「あー本当だ。とにかく、ごめんね? 芽衣。また今度一緒にゲーセン行こう。勉強頑張ってね!」
にこっと笑いかけてくるので、文句なんて言えるはずもなく。
「……うん、また今度」
微かに口の端を上げると、二人は満足そうに頷いて、あっという間に教室から出ていってしまった。
パタパタパタ、と廊下を駆ける上履きの音が遠ざかっていく。
――『また今度』
そんなの、一生来ないことはわかっていた。
いつもそう。
ばえるカフェも、カラオケも、プリクラも、「楽しかった」と事後報告。
そしてきまって「芽衣はまた今度ね」と付け加えられるんだ。
わたしたちが初めて出会ってから、一年とちょっと。
いつの間にか、三人は『一人と二人』に分けられてしまった。
どんより曇った胸の内に気づかないふりをして。
わたしはテストをカバンの中に突っ込んで席を立った。
「なんで急に?」
「それは」と言いかけた言葉は、紗枝の「あーわかった!」にいとも簡単にかき消されてしまう。
「塾でしょ。勉強に本腰入れるから部活やってる場合じゃないんだ」
「ええっ、まだ中二の五月なのに?」
「甘いよ美優。いくら余裕ったって、S高行くような人はこの時期から勉強するんだって」
「なるほどねぇ」
紗枝が得意げに語り、それに感心した美優が尊敬の眼差しをわたしに向けた。
「あ、やば! そろそろバスの時間きちゃうよ」
「あー本当だ。とにかく、ごめんね? 芽衣。また今度一緒にゲーセン行こう。勉強頑張ってね!」
にこっと笑いかけてくるので、文句なんて言えるはずもなく。
「……うん、また今度」
微かに口の端を上げると、二人は満足そうに頷いて、あっという間に教室から出ていってしまった。
パタパタパタ、と廊下を駆ける上履きの音が遠ざかっていく。
――『また今度』
そんなの、一生来ないことはわかっていた。
いつもそう。
ばえるカフェも、カラオケも、プリクラも、「楽しかった」と事後報告。
そしてきまって「芽衣はまた今度ね」と付け加えられるんだ。
わたしたちが初めて出会ってから、一年とちょっと。
いつの間にか、三人は『一人と二人』に分けられてしまった。
どんより曇った胸の内に気づかないふりをして。
わたしはテストをカバンの中に突っ込んで席を立った。