駅から少し離れた居酒屋街。
お酒は飲める年齢だし、お酒は強いけど、会社の集まりでもない限りこの辺りには足を踏み入れていない。


「藤沢ちゃん、この辺り来たりする?」

「いや、ないです…」

「だよね。」


元気で、少しだけ破天荒な性格とは裏腹に根は真面目な子だ。
高校時代もずっとバイトをしていたらしいし…

既に出来上がっている中年のおじさんや、露出度が高い服を着て男性に腕組みをしている同い年くらいの女性を見るなり、なんだこれは、と言わんばかりの表情で藤沢ちゃんは私の隣を恐る恐る歩いている。

この光景よりひどいものを散々大学で見てきたから、物怖じしない私はとうとう本当に保護者の感覚になる。


HPに載っていたマップを頼りに、バーへとたどり着いた。

本当に先日出来たばかりみたいで、お店の周りにはたくさんの花が飾られていた。


レンガ調の二階建てくらいの建物。
この都市から離れた土地には無さそうなくらいオシャレだ。
窓の形も上の部分が丸くなっていて、うっすらとガラスには模様が描いてある。

中はなかなかの盛況みたいで、少し声が漏れるのを聞こえる。



「入ろうか。」

「は、はいっ!!」



ビクビクしながら藤沢ちゃんはバーのドアを開けた。