先輩にもプライドがあったんだと思う。

選抜クラスからの視線や言動、直接的な嫌がらせは無いにしても1年生だった私たちからみても、不快に思うほどだった。


自分だけ落とされた、そして除け者のように扱われた。


それなのに、残り少ない時間を私たちの学年にそそいでくれた。

誰かが休んだ時の穴埋めで全部のパートを覚えていたこと。
暑い時に差し入れで大量のアイスを買ってきてくれて、一緒に食べたりしていたこと。
自動的にリーダーポジションになっていた私と、みんなが知らない間に一緒に練習方法を考えたりしてくれていた。


真凜には私のおかげって言われたけど、本当の功労者はさやか先輩なんだ。



「この代も、もうラストなんだね。」

思いを馳せるように、そして懐かしむようにさやか先輩はアリーナ席から下を見る。

2年前、さやか先輩はここから私たちを見ていた。
踊りきった瞬間、私は観客席のさやか先輩を見つけた。


大粒の涙を流していたのが、今でも忘れられない。



「さやか先輩は…」


こんなこと聞いたら失礼になるかな…


一瞬口を噤んだ私を見るなり、さやか先輩は私の肩にポンっと手を置いた。