「みやび、今帰りか」

「お父さん!」

偶然にも家の前で、お父さんと鉢合わせた。

「あれは…」

「那樹と少し出かけてたんだ」

「そうか」


何気ない親子の会話。
至って普通のただの日常の一コマだ。


「みやび…」

「何?」


お父さんは一瞬何かを躊躇うような素振りを見せると、ゆっくりと口を開く。



「那樹ちゃんには、言ったのか…?」



「言わないよ」


お父さんの問いに、私は顔色を変えず答える。
今あるこの日々を、壊さないため。

多分、私が壊して、

そして、壊れてしまうから、


「そろそろ、中に入ろうよ。」

「…そうだな。」


私は偽りの笑顔を保ちながら、そして家の中へ入った。