「私に、ダンスを教えてください。」


ファミレスのテーブルに頭がつきそうなくらい頭を下げて私にそう言ったのだった。


「ちょっと待って」


私はこの前の店長さんの話を思い出し、疑問を伝える。


「那樹、今度はアイドルを目指すの?」


流石に年齢的にもどうかと…
あと、普通に見た目があの頃とは違うから、…うん、違う。

那樹はううんと言いながらすぐさま首を横に振る。


「私は、アーティストを目指してる」


それは知ってるけど…と内心思いつつ、那樹の話に耳を傾ける。



「表現力を身につけたい。…唯一無二になりたいの。お願い!」



那樹はいつも真剣だ。
真剣なのは、分かりきってる。


「ごめん。無理だよ。」


那樹のことは店長さんづてで聞いたし、その後いろいろ話を私からも聞いたりした。

だけど、私のことについては…まだ、


「ダンスは、もう…」



"辞めた"



と言えないのは、本当は辞めたくないから。
諦めたくないから。

あなたの憧れだった"みやび"はもういないけど。


「分かった。」


那樹はあっさりと私の返事を了承してくれたのだった。


私にはモヤッとした感情が残った。