なんとなく、このちょっとふわふわな感じ、那樹は変わらないなぁと懐かしんでしまう。

店長さんが那樹と何かを話しているのが聞こえたけど、声が小さすぎて聞こえなかった。
鍵を貰ったのだろう。
チャリ、という音がした。

私は2人に背を向けたまま、残りのカクテルを飲み干す。



「ごめん、動けなかったよね」

「大丈夫。」


那樹は元いた目の前のソファ席に座る。

「那樹…」


私は身を乗り出し、手を伸ばす。


「えっ…」


那樹の顔が赤いのは、多分酔っている…じゃないはず。



「今も綺麗だよ。」



私の右手は、那樹の髪の毛に触れる。
そして私は優しく頭を撫でた。



「忘れないでいてくれて、ありがとう。」