ある日見た、熱すぎるあの眼差しを思い出した。


「この前、私の母とあの子のお母さん、たまたま街で会ったらしいんです。」

そして聞いたのは、頑張り続ける"あの子"のこと。




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「知ってたん、ですか…」

「でもまさかこっちにいるとは、って那樹も驚いてたよ。」


私がダンスで大学に行っていたことを、那樹は知っていた。

「憧れ…って言ってくれました。」

「那樹はみやびちゃんにずっと憧れてたんだよ。ただ好きなだけじゃなくて、みやびちゃんの横にずっと並びたかったんだよ、…きっと。」



憧れの対象にされるような人間じゃないよ、私。
今の私はこんなんで、何にも出来なくなって、そんな自分に言い訳して、ただただ、平凡にひたすら時間が過ぎるのを待っているような人間だよ。


「あっ…あき…」

「起きた、」


仕事が終わっただからだろうか、それともただ寝ぼけているのだろうか、店長と呼ぶはずの明さんを名前で呼びながら那樹はゆっくりと目を開ける。


「それじゃあ、鍵置いとくから、那樹戸締りよろしく。」

「っ、えっ!あ!終わってる!」

那樹は勢いよく、私にもたれかかっていた体制を戻し、店を出ていこうとする店長さんの後を立ち上がって追いかけていく。