でも、ひとりがいい。


後ろから女子生徒の騒がしい声が聞こえてきた。
声を発する側だと全く気にならないのに、ひとりで聞いている側だとうるさく聞こえるのはなぜだろう。


耳を塞ぎたい。イヤホンをして、すべて遮断してしまいたい。
そう願っても持っていないものは持っていなくて、急いで帰るしかなかった。


最終的には走り、息も絶え絶えになりながら家に着いた。
鍵を差し込んで回す。ドアを開けると、お母さんの靴と、その隣に知らない靴が一足。


誰だろう。
足音を立てないようにリビングに入ると、そこには誰もいなかった。
電気もついておらず、生気がない。


となると二階。
階段を数段上り、耳をそばだててみると、母親の嬌声が聞こえた。


なんだ、そういうことか。


携帯を取り出し、今になって母親から連絡が入っていたことに気がついた。
[今日ちょっと彼氏来るから、友達のとこかどっか泊まって。急になってごめん]