輪郭を強く縁取るように、俺は後ろから佐々木さんを抱きしめた。


突き飛ばされたって良かった。
気持ち悪い、と罵詈雑言を浴びせられても良かった。


佐々木さんは生きているのだと、確かめたかった。


――もう、共犯ですね。


そう笑う佐々木さんの横顔はなんとも妖艶で、麗しかった。
堂々と咲く、美しい椿のようだと思った。


誇り高く咲き続ける、一輪の花。
それが佐々木さんなのだとしたら、穢したのは一体誰なのだろうか。


どこの誰かも知らない人間に怒りが湧く。
穢れなんて知らないまま、純粋な心を持って生きて欲しかった。
死にたいなんて思わず、人生に希望を抱いて、生きて欲しかった。


もし佐々木さんが死にたいと思わなかったら、放課後の一時間はないのだろうか。


言葉にし難い、心地よさ。
まるで昔から一緒にいたような懐かしさが、その時間にはある。


あの日、なぜ屋上に出向いたのかはよく分からない。