それもほんの少し、目に見えない程度擦り減ったぐらいだけれど。


───私はいつから、死にたいと思ったんだろう。


あれ、いつだっけ。
もう上手く思い出せなくなってしまった。
何度も何度も、このどす黒い感情を抱いたからだろうか。
それによって感覚が麻痺してもう忘れてしまったんだろうか。


「先生、じゃあ次私が質問します。好きなものとかありますか?なんでもいいです」


無理矢理明るい声に切り替えた。
自分を偽って、明るく見せるのには慣れている。


中学校ではそうやって振る舞っていたらそれが本当の性格だと思われた。
明るくて、少しお調子者。
そんな性格、私の中には一ミリもないのに。


「好きなものね。なんでもって言われたら浮かばなくない?てか今、声作ったでしょ」


自然すぎるほどに告げられた、最後の一言。
私は愕然としたまま、渋谷先生を見つめる。


「……先生って、人の心読めるんですか?」