その思い出は懐かしくて、少しだけ私に寂しさを与えて、だけどあたたかく、私の心に残り続ける。
じんわりと心をあたためてくれて、これからも抱きしめていたいと思うような───そんな、思い出。


「思わないよ」


青空を見上げながら、私はきっぱりと言った。
隣にいる蒼真くんは少しだけ驚いて、すぐに笑った。


「ほんとに?嘘じゃない?」

「嘘じゃないよ」


嘘なんかつくわけないのに。
私はくすりと笑って、隣にいる蒼真くんの腕を掴んだ。
そのまま指を絡めて、恋人繋ぎにする。


「だって、私には───生きる意味があるから」


十七年半かかって見つけた、私の生きる意味。
それは───一緒にいたいと思える人が、隣にいること。


毎日同じ部屋のベッドで一緒に起きて、他愛もない会話を交わして、一緒にピアノを弾いたり、たまにはどこかに出かけたりして、一緒に帰ってきて、また同じベッドで眠る。