鞄の中から車の鍵を出し、鍵を開けた。
ドアを開け、運転席に乗り込む。
香音も車のドアを開けて、助手席に座った。


「……いいの?家帰んなくて。お母さんに怒られるんじゃない?」

「いいの。さっき蒼真くんが外にいたとき、お母さんと話した。あんたみたいの娘じゃないって言われてさ、頭にきちゃって。もう家には帰らないって言った」


リュックを胸の前で抱えて、ぽつりぽつりと話す。
その顔つきは少し苦しげでもあり、どこか晴れやかでもあった。


「言い過ぎたかなって思った。あれでも母親だし……でも同時に、やっと言えたって思った。ずっと言いたかったけど言えてなくて、言えるきっかけを探してたの」


香音はそこで言葉を切ると、俺のことを真っ直ぐ見つめた。


「だから、ありがとう。蒼真くん」

「俺?俺はなんもしてないよ。どっちかって言うと、お母さんからしたら俺は悪人になるだろうし」

「私にとっては悪人なんかじゃないよ。蒼真くんのお陰で、私は変われた」