校長先生お手製のコーヒーが出され、どうぞと笑顔で進められる。
ほかほかと湯気を立てているそれは、不穏なこの場には似つかわしくない。


逸る気持ちを静めようと、コーヒーを一口すすった。
熱さと苦さに喉が押しやられる。
コーヒーの苦みは特に苦手では無いのに、校長先生の冷たい視線と、これから起きるであろう出来事に苦みが引き立てられている。


カップを置くと、それが合図かのように校長先生が話を切り出した。


「自分がどうしてここに呼び出されたのか、分かっていますかね」

「……はい」

「それならば話が早い。渋谷先生、あなたはどうしてあんなことを?」

「どうして……」

「渋谷先生が行ったことは許されない行為です。生徒を守る教師として、人間としても。教え子に手を出すなんて……」


校長先生が顔を手で覆った。
二年連続でそんなトラブルが起きるなんて、予想もしていなかったのだろう。
俺はただ、カップの中に入った濃い茶色の液体を見つめていた。