「おはようございます」


そう言いながら職員室のドアを開け、中に入った。
なぜか――先生たちの視線が冷たく、俺を軽蔑的に見つめていた。


もしや、と冷や汗が背中を伝う。
肩をすくませながら自分の机まで歩き、荷物を置くと、滅多に職員室に現れない校長先生が俺の隣まで来ていた。


「渋谷先生……少し、いいですかね」


優しい口調だった。校長先生の顔を見れば、口元には柔らかい微笑みを称えていた。
口調も、表情も、そのすべてが優しげなのに、温度だけがまるでない。


奥底には凍ってしまいそうなほどの冷たさがあって、それを覆い隠すように優しさがある。


先生たちからの視線が痛い中職員室を出て、校長室へと入った。
椅子に座ってと手で促され、深紅色の大きいソファに座る。


ふかふかなソファに身体が沈む。
いつもなら心地がいいと思うはずなのに、深淵に身体が引きずり込まれているようで気持ちが悪い。