彼に選ばれた側の私が、とやかく言えることではない。


「分かってるんだよ。ふたりの関係ばらしても、きっとふたりは一緒にいる」


ジャケットに入った携帯を取り出し、身体を寄せ合う私たちの画像を表示させる。
町田先生の瞳から涙が一筋こぼれ、液晶画面に落ちて跳ねた。


「実は、ずっと前から気づいてたの。ふたりの関係に」

「ずっと、前から……」

「うん。音楽室通りかかったときに、渋谷先生と佐々木さんが話してる声が聞こえて。覗いてみたら、恋人みたいな距離感で」


本当に、蒼真くんのことが好きなんだろうと思った。
話をしている間も、町田先生の視線は携帯の中の蒼真くんに注がれている。
言葉を紡ぐ度、彼女の瞳からは涙がこぼれる。


「佐々木さんの相談に乗ってるってことは、渋谷先生から聞いてたの。ほら、佐々木さんにも一回聞いたでしょ?お家で困ってることあるのって」