「これ連弾って言える?ただじゃれ合ってただけじゃない?」

「ギリ言えないかもね。めちゃくちゃなんだけど今日の演奏」


音を外したり、演奏が止まったり。
めちゃくちゃな演奏だろうけど、弾いている私たちが楽しければそれでいいのだ。


「夏休みでいっぱい練習したでしょ。上手くなってる」

「でも蒼真くんも教えてくれたじゃん」


夏休みは毎日のように蒼真くんの家に通い、ピアノを弾いたり、抱き合ったり、とにかく幸せだった。
勉強はあまりしなかった。来年に大学受験を控えている身だというのに。


勉強をしろと蒼真くんに怒られるかと思ったが、意外にも彼は怒らなかった。
『今したいことをすればいい』と言って、私にピアノを教えてくれた。


大学に行きたいとは思っていない。
蒼真くんと出会うまでは適当に仕事に就こうと思っていたけれど、今はその考えは変わっている。


蒼真くんと一緒にいたい。
あの鬱陶しい親から離れて、蒼真くんと生きていきたい。