手を伸ばし、香音の手に自分の手を重ねた。
少し力を込めれば、香音が指を絡ませてきた。


綺麗だね。
香音の手が、そう語っている気がした。


俺も、香音の手を握り返した。
初めて彼女の手を握ったとき、俺は怯えていた。
確かな温もりを感じると同時に、自分が暗い道へと踏み出してしまったことに気がついた。


あの時の俺なら、この手をゆっくりと、離していたのかもしれない。
でも、もう違う。


お互いの瞳に、同じ景色が映っているのなら。
俺はこの手を、離さない。いや、離したくない。


辺りの喧騒も、視線も、なにも気にならなかった。