「隣にいて気持ちを分け合いっこしてくれる人が、自分に合わない人だったらだめだけど……私の隣にいてくれるのは、蒼真くんでしょ?だから、大丈夫」

「香音って、人の心読めんの」

「読めないよ。でも、今の蒼真くん、なにかに悩んでそうだったから」


ベンチの上に無造作に置かれていた右手に、香音の手が重なった。
知り尽くした彼女の体温が、俺を包み込む。
見つめ合い、次第に顔が近づいていく。
香音が目を閉じた瞬間、会場にアナウンスが響き渡った。


『───十分後より、花火の打ち上げを開始いたします。観覧席の入場は既に開始されていますので、まだお入りになっていない方は───』


唇が触れあいそうな距離のまま、俺たちは笑い合った。
立ち上がり、手を繋いで歩く。
りんご飴とイチゴ飴は道中で食べきった。


観覧席を予約しておくべきだったと少し悔やんだけれど、仕方がないから近くの浜辺から見ることにした。