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赤、青、黄色、緑。
色とりどりの光が、暗闇に浮かんでいる。


ほんのりと汗ばんだ両手を擦り合わせながら、俺はたったひとりのことを待っていた。


「あ、そうまー!」


その声に反応し、勢いよく振り向く。
見知らぬ女性が彼氏と思われる男性に走り寄り、腕を絡ませていた。


なんだ、人違いか。いやそもそも、香音は俺のこと「蒼真」って呼ばないし。
分かっているくせに、お祭りというイベントが俺を鈍らせてくる。


「蒼真くん!」


呼ばれた方に視線を向ける。
そこには黒い浴衣を着て、髪をまとめた香音が立っていた。
足元は歩きやすそうなサンダルで、小走りでこちらに向かってくる。


「人多いね、すぐ見つけられなかった」

「ね」


暑さなのか照れなのか、赤く火照った香音の頬を見つめる。
メイクもいつもとは違うし、髪型だって違う。
特に椿をあしらった浴衣がすごく似合っていて、とても綺麗だ。