寝ぼけ眼を擦りながら、階段を上っていく。
ここの屋上、わりと綺麗な景色が見えた気がするんだよな。
この間は夕暮れ時だったからかもしれないけど。


屋上へと続く階段を上りきった頃には、息も絶え絶えだった。
やっぱり私体力無いな、少しばかり体力をつけた方がいいんだろうか。
小さい頃から運動が苦手で、体育の授業では見学ばかりしていた。そのしわ寄せがきている。


鍵が開いていなかったらどうしようと思ったけれど、想像以上にドアはすんなりと開いた。
ドアが開く音に反応して、奥の方の人影がゆらりと動く。


「あれ、香音。なんで来たの、寝てて良かったのに」

「来たくなったの、ここに」


まだ面食らった表情を浮かべている蒼真くんを横目に、私はフェンスに手をかけ、街を見下ろした。
当たり前だけど、学校の屋上から見える景色とは全く違う。
大して距離は離れていないのに、切り取るシャッターを押す場所が違えば、こんなにも景観が変わってしまう。


「そうだ。香音、腰大丈夫?昨日無理させたから」

「ばっちり痛い。でも、いいよ。辛い痛みじゃないし」