5
朝目覚めると、隣にいるはずの蒼真くんはいなかった。
腕を伸ばしてあるであろう温もりを探しても、触れるのはひんやりとしたシーツの質感だけ。
仕方なく身体を起こすと、腰と喉に鈍い痛みが走った。
昨晩快感に溺れた代償だろう。
服なんか着ないまま寝たはずなのに、今の私はしっかりと服を着ている。
蒼真くんが着せてくれたんだろうか。
素足のままベッドから抜け出し、ぺたぺたと気の抜けたような音を鳴らしながら歩いていく。
「蒼真くん?」
リビングに声をかけても返事は返ってこない。蒼真くんの姿もない。
電気もついていないし、どこかへ行ってしまったんだろうか。
テーブルに目をやると、小さいメモ書きが残されていた。蒼真くんの字だ。
[おはよう、起きた?
俺屋上にいるだけだから、心配しないで。
ちゃんと戻ってくるから]
蒼真くん、屋上にいるんだ。
じゃあ、向かうべき場所はひとつだろう。
Tシャツ1枚では肌寒い気がしたから、近くにあったカーディガンを羽織って部屋を出た。