「ふたりきりの時だけでも、敬語やめない?あと、先生って呼ぶのも」


恥ずかしさを誤魔化すように、アイスを吸った。
甘くもほろ苦いコーヒー味。久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しい。


「……はい、分かりました。じゃなくて、分かった?」


佐々木さんも照れを隠すようにアイスを一口吸った。
心なしか顔が赤い。可愛い。


「先生って呼ぶのがだめなら、名前で呼ぶってことですか?あぁ、また敬語になっちゃった」


まだまだ慣れないみたいだ。
どうやって呼んだらいいのか、空になったアイスのケースを手に考え込んでいる。


「名字にくん付けとか?渋谷くん。……なんか違う」


突然の渋谷くん呼びにふたりで声を上げて笑った。
渋谷くんだなんて、違和感しかない。


生徒には先生とか渋谷先生と呼ばれるし、部活を持っているわけでもないから下の名前で呼んでくるような生徒もいない。
まぁたまに、イジりで呼んでくるやつはいるけど。


「渋谷くんって、違和感ありすぎでしょ。下の名前でいいよ」

「下の名前?確か、蒼真(そうま)、でしたよね」