苦しい夢を見て、不安に襲われたと。
だから今日の朝、屋上に向かったと。


佐々木さんが屋上にいるときは、不安でいっぱいな時なんだろう。
押し潰されそうなほどの不安が身体にまとわりついてきて、苦しくて仕方が無いとき。


そんな時に、少しでも苦しい気持ちを和らげるために屋上に行くんだろう。


「どうぞ、入って。今朝掃除機かけたから、汚くないとは思うんだけど」

「お邪魔します。大丈夫ですよ、私あんまり気にしないんで」


なんの変哲も無いマンションの一室だけど、佐々木さんがいると華やかな場所に思えてくる。


「夜ご飯どうしますか?美味しそうなお弁当あったので買ってきちゃったんですけど」

「お、ありがと。じゃあそれ食べよっか。ご飯の前にお風呂入る?」

「私ご飯の後にお風呂派なんですけど。先生はどうですか」

「俺もご飯の後派。同じだね」


白いレジ袋からお弁当が出てくる。
麻婆茄子丼に焼肉弁当。モッツァレラチーズが乗ったトマトのサラダ。


「うわ、美味しそう。佐々木さんセンス良すぎ」

「やった。先生の好きな食べ物分かんなかったから、適当に選んじゃったんですけど」