目の前に希望があるのに、あと少しで掴めるのに、その度誰かが邪魔をする。


いい加減、幸せにならせてくれ。
もう嫌というほど傷ついた。
嫌というほど、苦しんだ。
後悔も積もりに積もって、心の中に暗い影を落としている。


『渋谷先生、佐々木さん!こんなところにいたんですね』


いつもなら綺麗だと思う町田先生が、途端に悪人のように思えた。
漂ってくる柑橘系の匂いも、鼻をつんと刺すようで気持ちが悪かった。


どうして教室を抜け出したのか町田先生に問われても、私は上手く言葉を返せなかった。
出てくるのは文章を繋ぐためにあるような言葉ばかり。
私が発したその言葉を遮るように、渋谷先生がひどく冷たい声を出した。


声色の冷ややかさに驚きながら渋谷先生の顔を見ると、渋谷先生自身も驚いているようだった。
自分からこんなにも冷たい声が出ているのかと。


それも一瞬だったようで、すぐに渋谷先生の表情は『先生』の表情へと変わっていた。
屋上を出て、階段を下りる途中。
私の後ろにいた渋谷先生が、なんの前触れもなく言った。