自分の知らない一面がどんどん露わになっていく。
怖い。自分が自分ではなくなってしまったみたいで。


『やっぱ、もうちょっとここにいよっか。五分くらいだよ?』


その言葉を聞いたときの私の顔は、はち切れんばかりの笑顔だっただろう。
ふたりでベンチに座って、空を見上げて。
ひとりで見ると怖かった空も、渋谷先生となら怖くない。


羽毛のような形をした雲が空に浮かんでいた。
昔、空に興味があった。


ころころと表情を変えて、笑ったり、泣いたり、怒ったりしているみたいで。
でも、それは束の間だった。
とある一件があってから、私は空が嫌いになった。


そろそろ時間だと渋谷先生に言われ、立ち上がろうとしたら、目の前に手が差し出された。
それは渋谷先生の手であり、私を救ってくれる希望だった。


光に包まれていて、あたたかい、一抹の希望。
私がそれを掴もうとした瞬間、屋上のドアが開いた。


すっと手を引っ込めた瞬間、同じように私の瞳からも輝きが消えたと思う。
私は希望を掴もうとしていたのに、また遮られた。