1学期も無事に終え、(そら)は優雅な夏休みを過ごしていた。図書室でのテスト勉強にはドキドキキュンの嵐だったが、なんとか勉強は続けて見事赤点を免れたのである。もちろん補習地獄もない。

 夏休みに入ると葵と伊丹は剣道部の練習に忙しくしていた。全国大会も控えているので当然なのだろう。リッカやエマもバイトや部活に勤しみ、天はおひとり様時間を満喫する。

 今日も日課のネタ集めの散策に街に出かけた。


「んー……なんか面白いいい感じの現場ないかな」

 そう独り言を呟き、天は街中をぶらぶらする。夏休みだからか平日でも人が多い。その中で、一際賑わう集団が目に入った。天はなんだ?ドラマの撮影か?など野次馬精神で近づいていく。すると、よく見知った顔がその集団の中にいた。

「あれ……霞ヶ浦さん?」

 そう、そこには響がいた。そしてその周りには綺麗系から可愛い系の女の子が響を囲んでいる。天は思わず、さすが王子と呼ばれている人だなと感心した。ネタにちょうどいいと観察していると、ふと響と目が合う。 

「あー!赤音さん!ちょうどよかった、安岐のことで聞きたいことがあってさ。そういうわけで、ごめんねみんな。またね」

 響は一人でペラペラ喋り出し、周りの女子に愛想よく手を振り天の方へやってくる。その都度「全国頑張って!」やら「応援してるね」やらの声援をにこやかに手を振りつつ返している響。おお、王子スマイルってやつ?と天が考えていると目の前にきた響が天の手を取り「行くぞ」と小声で指図してきた。

「へ?うわっ」

 突然のことにわけもわからず、天はされるがまま。走り出す響に手を引かれて、人混みを掻き分けていく。

 しばらく走るとようやく立ち止まり「ごめん赤音さん」と言いながら呼吸を整えていた。

「いや……いいですけど。いったいなんです?安岐くんのことで私に用があるんですか?」