2人の言葉に伊丹は反応して3人で顔を見合わせる。そして、伊丹がクスッと笑った。その反応にリッカとエマは驚く。

「え?なに?」

「もしかして……」

「まあまあ、野暮ってもんだぜ?」

 3人がそんな話をしているとは知らない天は、ようやく解けた問題に「よしっ」とガッツポーズをして葵を見る。

「解けた!」

「よくできました」

 ニコニコと笑いかける葵に天は嬉しくなる。

「安岐くん、ありがとうね!おかげでできたよ!」

「いえ、赤音さんの力ですよ」

「そんな事ないよ。でも、やっぱりすごいや安岐くんは!教えるの本当うまいね」

 そんなやり取りをしているとリッカが咳払いを一つする。それに反応して他の4人も自然とそちらの方を向く。

「はいはい。おしゃべりはいいから。さっさとやりなさいよ天」

「はーい」

 少しだらけた空気を引き締めて、集中して各々取り組むことにした。天も今度は英語の問題を解いている。シャーペンを紙に走らせ、順調に問題を解いていく天。そんな様子を葵は横目に見ていた。

 不意にトントンと肩をつつかれ天は顔を上げて隣を見る。そこには柔らかい笑みを浮かべた葵がいた。その顔を見て少しドキッとしたが、天は平静を装う。何の用だろうと思っていると葵がトンッとノートに指をのせる。目で追えば、そこには文字が書かれていた。

『赤音さんは偉いですね』

 文字を読み天は葵を見る。何が偉いのかと疑問に思いつつ首を傾げた。


 そんな天の態度に葵はクスッと笑う。そして、またノートに文字を書き始めた。

『だって、こうして頑張って勉強してるじゃないですか。逃げないで偉いです』

 それを読み天は文句を言おうとしたが、声にだすとまたリッカに叱られる。だから葵と同じようにノートに文字を書いた。

『逃げないよ!またそうやって……意地悪だ』

『俺は優しいですよ?』