「いや、あんたが原因だからね?」

 そんなやり取りをする2人に葵はクスッと笑い、エマと伊丹は呆れていた。

「とりあえず、勉強っていっても得意苦手があるし、みんなの学力ってどこらへんなんだろな」

 伊丹がそう言うとエマとリッカは顔を見合わせる。

「私らはいつもとくに問題ないけど」


「てか、天だけでしょ。テスト前にヒーヒー言って一夜漬けみたいな無謀な事してるの」

「ちょっ!リッカ!そんなこと言わんでも!」

 リッカに日頃のダメさをバラされ天は焦る。そんな天に葵はニコニコと笑顔で言葉をかける。

「大丈夫ですよ、赤音さん。俺がバッチリ教えますから」

「……うん、ありがとう安岐くん……」

 課題として出されている数学のワークを開き、葵が問題集を天に解かせるという流れで勉強会はスタートしたのだが……

「だから!なんでそこでその答えになるわけ!?」

「いやだって、ここさっきもやりましたよ?」

「そんなん嘘だ!」

 天の理解力が余りにも乏しいため、根気強く葵が教えるも一向に進まない。それを見て呆れる向かい側に座る3人。

「よくキレないわね安岐葵。何あれ?盲目ってやつ?」

「安岐は器が本当に大きいからなぁ」

「あ、混乱しすぎて天の顔がやばい」

 エマの指摘の通り天は眉根を寄せて考えていた。切れ長の目のため、その顔は睨んでいるようにみえる。本人は本当に困っているだけなのだが。

「いや、あんなん睨みつけてるようにしか見えないわ」

 伊丹が突っ込めば女子二人も頷く。そんな天を葵が真剣な眼差しで見つめる。それに対してリッカは首を傾げた。

「なんか安岐葵、天を見る目がいつもと違うのよね」

 その言葉にエマも同意する。

「うん、なんかこう……」

「……恋する乙女みたいな?」

「まあ、彼は男だけどね」