「……あ、はい。えっと……ぜひ」

 天は顔を赤くしながら小さくお辞儀をする。葵が嬉しそうに笑ったのを見て、なんだか自分も嬉しくなった。

 駅に向かうため歩き出した天の後ろに、葵は少し声を張りながら叫んだ。

「赤音さん!また明日!」

「〜っ!また、明日」

 振り向いてまた小さくお辞儀をする天。葵は片手を軽く上げて天が見えなくなるまで振っていてくれた。




 家に帰り、全て終えて寝るだけ。今日の刺激的な出来事をとりあえずネタとしてプロットに取り入れる天。何回かキュンとしたものの、やはり全て恋愛小説のネタとして昇華された。

 しかしベッドに寝転がりながら、スマホのメモに文字の羅列を打ち込む天の顔はどこか楽しげである。

「また明日……か」

 そんな声が漏れる。その顔はまるで恋する乙女のような笑みだった。